【Satsuki式マインドセット】「無価値感」にさよなら。休養を「人生の休暇」ではなく「回復のための闘病期間」と捉える考え方

Satsuki式マインドセット

はじめに:休むことが最大の仕事である理由

うつ病で休養しているとき、多くの人が共通して抱える感情があります。それは「自己嫌悪」です。

「こんな状態で休んでいていいのだろうか?」
みんなは頑張っているのに、自分だけ置いていかれている」
「何もできない自分は無価値なのではないか?」

真面目で、責任感が強く、一生懸命に生きてきたあなただからこそ、こういった感情に苦しめられてしまうのです。かつての私も、ベッドの天井を見上げながら、自分を責め続けていました。

日本では「働かざるもの食うべからず」に象徴されるように、「勤勉」が評価される文化が根付いています。真面目で勤勉なことは素晴らしいことですが、勤勉に過ごせないタイミングもあって当然なのです。しかし、その過ごせないわずかなタイミングすら許すことを拒んでしまう人がうつ病になってしまった人には多いのだと思います。

真面目で、責任感が強くて、一生懸命で。常に勤勉に生きていたからこそ。

しかし、その「休んでいる自分を責める時間」こそが、回復を最も遅らせてしまう原因です。

この記事では、休養を「ネガティブな離脱」ではなく、「人生を立て直すためのポジティブなプロセス(人生の休暇)」と捉え直すためのSatsuki式マインドセットと、具体的な思考法をお伝えします。

「人生の休暇」と捉えるべき3つの理由

あなたの休養は「罪」ではなく、むしろ未来のあなたにとって「権利」であり、「義務」でもあります。休養をポジティブに受け入れるための3つの論理的な理由を理解しましょう。

理由①脳という資本を修理する「戦略的な投資」である

あなたの脳は、長期間にわたるストレスと疲労によって故障した、企業の最も大切な「資本(工場や機械)」です。

企業は、故障した機械を無理に動かし続けて、大事故や完全停止のリスクを負うことはしません。すぐに稼働を止め、修理とメンテナンスを行います。

あなたの休養は、まさにこの「修理とメンテナンス」です。現在は回復に全エネルギーを注ぐことで、将来、再び長く、効率よく活動するための戦略的な投資を行っているのです。

ショッピングモールでも、リニューアル工事で閉館する期間があります。それは、古くなったり故障しかかった設備による事故を未然に防いだり、より良い店舗や環境を整えて、リスタートするための期間です。

休んでいるのではなく、今は脳という大切な資本を修理している真っ最中です。

そして、より良い環境を整えて、再スタートするためのリニューアル工事の最中なのです。

理由②目的意識をゼロベースで再設計する「インターバル」である

うつ病になる人は、多くの場合、「〜せねばならない」「〜が正しい」という、外部から与えられた価値観他者の期待に応えようとして頑張りすぎた結果、心身が限界を迎えます。

この休養期間は、その「外部の基準」から一度離れ、「私は何がしたいのか?」「どう生きたいのか?」をゼロベースで考え直すための、強制的な人生の再設計期間(インターバル)です。

私も幼い頃から、「他者の価値観、他者の期待に応えることが正しいことだ」と無意識に考えながら行動していました。自分がやりたいことなど、二の次。なにを求められていて、自分がどうすることを期待されているのかを常に考えていました。

その考え方のおかげで、「かなり仕事ができる人材」として生きてくることはできましたが、結果として、私が壊れました。

おそらく以前のまま、生活を続けていてもいつか壊れていたと思います。「生き方に無理がある」という気づきを早めにくれたのだと思います。

この休暇は、生き方を見直すための大切な期間です。

あなたの生き方を再設計するために、与えられた休みなのです。

理由③ 新しい価値観を獲得する「心の成長期間」である

闘病経験は、健康な時には決して気づけない「新しい価値観」をあなたにもたらしてくれます。

  • 「朝、布団から出られただけで素晴らしい」という、普通にできることの圧倒的な価値
  • 「家族が優しく接してくれた」という、小さな感謝

この期間に得た感受性は、あなたが回復した後の人生の豊かさに直結します。一見ネガティブな経験が、あなたの心の成長期間となっているのです。

重病や大事故で死の淵を彷徨った経験がある方が、生き方を劇的に変えるような話はよく聞くと思います。それは、まさしく新しい価値観を手に入れたからだと思います。

「うつ病になると、以前の自分には戻れない」

そう嘆く方をよく見かけます。私はそれでいいと思っています。以前の自分に戻ってしまうと、また壊れます。生き方に無理があったのですから。

休むことで、新しい自分になるチャンスなのです。自分を見つめなおし、自分をリニューアルするための大切な期間です。

この期間をチャンスと受け止め、思い切って完全に立ち止まることが大切です。

自己嫌悪を断ち切るためのSatsuki式マインドセット

自己嫌悪に陥りそうになった瞬間、あなたの思考を前向きな方向に切り替えるための具体的なテクニックです。

自己嫌悪の「主語」を消す

自分がダメだ」「自分が悪い」という主語を、まずは消しましょう。

あなたが無気力になる、集中力が続かないといった症状の根源の大半は、あなたの性格の悪さではなく、脳疲労による前頭前野の機能低下です。病気なのです。風邪で咳が出て止まらないのは、あなたのせいではなく風邪ウイルスのせいなのと同じです。

私はなぜ、咳を止めることができないんだ!」と自己嫌悪に陥るのは辞めましょう。

咳は、ウイルスから体を守るために起こる反応です。脳疲労による前頭前野の機能低下も、このまま稼働し続ければ取り返しのつかないことになるので、脳を守るための体の反応なのです。

主語を「自分が悪い」から「脳に不具合が起きている」に変えるだけで、自己嫌悪は「建設的な問題」へと変化します。

「三行日記」でポジティブな証拠を集める

「自分は無価値だ」という思考は、脳がネガティブな情報ばかりを拾い集める癖がついている証拠です。

この癖を直すため、毎日寝る前に「三行日記」をつけ、小さな良いこと(例:温かいお茶がおいしかった!窓から見えた青空がいつもよりきれいに見えた!)を記録します。
(※詳細はこちらの[うつ病からの回復に役立った「三行日記」:1244日継続できたSatsuki式マインドセット]をご参照ください。)

自己嫌悪が襲ってきたとき、この日記を読み返しましょう。そこには、あなたが無価値ではないという証拠が、しっかりと書き残されています。日常生活の、小さくても価値のあるポジティブが積み重ねられています。

責めるから「切り離す」へ

自己嫌悪から脱却し、回復を最優先するためには、「誰かを責める」という感情を、「責任の所在を切り分ける」という冷静な行動に昇華させる必要があります。

Step 1: 責任の切り分け

うつ病になった原因が100%自分にあることは、ほぼありません。あなたに無理をさせ続けた環境や会社、出来事に原因があることが大半です。

そのため、すべてを「自分のせい」と決めるのではなく、「うつ病になったのは、私の弱さではなく、あの環境/あの人の対応に9割の原因があった」と紙に書き出してみましょう。

この時点で、「そのせいで自分はうつ病になってしまって、休む必要があるのだ」と休養の正当性が出ます。

Step 2: 感情の切り離し

そして、責任は相手にあると認識した上で、その相手や出来事を「これ以上考えない」と決めます。責めるエネルギーを意識的にストップさせます。

私は、これをうまくできるまで時間がかかったので無駄なエネルギーを使いました。

「○○のせいで」と考えると、その人や出来事に対して怒りが湧きます。その怒りは、感情や思考を支配して、その人や出来事からはすでに距離をとれているはずなのに、毎日のようにそのことを考えているような状態になっていました。

それは脳のエネルギーを消費し、新たな脳疲労を起こします。

自分で「これ以上考えない」と決めましょう。どうせその相手は私にしたことなんて忘れて、どこかでしょうもないことをしているんですから。そんな奴への怒りで、貴重なエネルギーを注ぐなんてもったいない

そう考えるようになって、その相手から解放されました。

Step 3: 回復への集中

「責任は相手にある。だが、回復の責任は私自身にある」と決意します。相手への感情を横に置き、自分の療養に全集中します。

相手を責めたところで、自分の回復には逆効果です。責めたとて、回復を手伝ってくれるわけではありません。おそらく手伝って欲しくもない相手だとは思いますが。

過去への執着を断ち切り、「人生の休暇」を有効活用できます。

「休暇」という捉え方を変える

「休暇」というと、バカンスなどのイメージが付き纏います。

「休暇」という言葉の一般的イメージをAIに聞いてみると、以下のようなものが出てきます。

「のんびり」「癒やし」「解放感」「旅行」「レジャー」「アウトドア」「帰省」「趣味」「自由時間」「非日常」「海」「山」「温泉」「リゾート」「のびのび」「楽しみ」「ワクワク」「開放的」「ストレスフリー」

しかし、「うつ病での休暇」に当てはまるものはありません。この記事では、敢えて一般的に使われる「人生の休暇」という言い方をしていますが、これは「闘病期間」だと私は思っています。

「闘病期間」という言葉の一般的イメージをAIに聞いてみると、こうなります。

「治療」「苦しみ」「耐える」「病と向き合う」「回復」「薬」「副作用」「不安」「希望」「絶望」「孤独」「焦り」「長い時間」「終わりが見えない」「忍耐の時」「制限」「体力の低下」「日常の変化」「経済的な負担」「試練」「戦い」「人生の転機」

周りからは「人生の休暇だと思って。」なんて言葉をかけられますが、明らかに「闘病期間」の方が現実に即していると思います。

でも私の経験上、「うつ病で闘病中です。」って言うと怪訝な顔をされることが多いんですよね。「休んでるんでしょ?」って思われているんでしょうね。

だからこそ、私はこの期間を「闘病期間」であると認識した上で、その目的を「人生の再設計(リニューアル工事)」と定めることが大切だと考えます。

つまり、「人生の休暇」という言葉は、他者や世間への建前としてではなく、 「自分の人生を最高のものにするための、必要なプロセス」 という意味で、 自分で自分に与えるポジティブな許可証 として使うべきなのです。

「私は戦っているんだ。」と、そう受け止めなおすだけで、罪悪感はかなり消えると思います。
私がこのブログで「闘病体験記」というカテゴリ名にしているのは、これが理由でもあります。

「休暇」を最大限に活用するための心構え

「何もしない」を目標にする

休養期間に「何かをしなければ」と焦り、資格の勉強や読書リストを作ろうとすると、脳は「新しいタスク」と認識してしまい、疲労が蓄積します。

この休暇中の最大の目標は、「何もしないこと」「脳を完全に休ませること」です。

足を骨折をしているのに、「何かしなければ」とジョギングするようなことをしないようにしてください。

「今日は何もクリエイティブなことをしなかった」という事実を、最高の成果だと捉えるマインドセットを持ちましょう。足を骨折した時は、足を動かさないことが最良の治療法です。

では、脳が疲労しているのであれば・・・。そう、「何もしない」ことが最良の治療法です。

罪悪感は「回復への意欲」の裏返し

休むことへの罪悪感は、あなたが「早く治したい」「社会に貢献したい」という強い意欲を持っている証拠です。

この意欲自体は素晴らしいものです。そのエネルギーを、「今はとにかく休んで治すこと」という最も必要な行動に集中させましょう。

まとめ:休暇が終わったら、きっと晴れていく

「そのうちきっと晴れていく」というブログ名が示す通り、この人生の休暇は永遠に続くものではありません。

今は、嵐が過ぎ去るのを待つように、静かに自己嫌悪を手放し、脳を休ませることに専念してください。この貴重な休暇を終えたあなたは、以前よりも強く、以前よりも豊かな価値観を持った、新しい自分になっているはずです。

あなたが休むことは、最も前向きで、最も未来志向の、勇敢な行動です。だって、果敢に闘病しているのですから。

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