はじめに:「体調ガチャ」を卒業する『波に振り回されない回復戦略』
以前の記事では、うつ病の「波」の正体が、脳のエネルギー(充電量)の不足であることをお伝えしました。良い日にエネルギーを使い切ってしまうと、翌日以降に必ず大きな不調の波が来ます。
波の存在を理解し、「投資マインド」を持つことは重要です。しかし、それだけではまだ「体調ガチャ」からは卒業できません。
本当に波に振り回されないためには、波が大きくなる前に「予兆」を掴み、先手を打つことが不可欠です。この記事では、あなたの持つ「客観的なデータ」を使って、体調の波を論理的に予測し、行動計画を立てる方法を解説します。
原因分析:あなたの体調の波は「データ」でできている
調子の波は、あなたの「意思の弱さ」や「怠惰」ではなく、「特定のトリガー(引き金)」と「身体の反応」が連動して起きる論理的なパターンです。
このパターンを見つけるには、感情的な感覚ではなく、「データ」が必要です。データとは、私たちが前回・前々回で作成した、「思考の交通整理の記録」と、「ざっくり5段階の体調記録」です。
体調の波は予測不可能なものではなく、行動・思考・症状のデータによって必ず予測可能です。この予兆(トリガー)が確認できた時が、「緊急行動計画」を発動するタイミングになります。
実践:Satsuki式「体調波の可視化」:既存の記録を「予測データ」に変える
以前の記事で推奨した「ざっくり5段階記録」と、「思考の交通整理」を組み合わせることで、「波の予兆」を発見するワークを実践します。
ステップ1:記録の統合と可視化
以前の記事で記録していた以下の2つのデータを、メモ帳やノートに日別で記入してください。スマートフォンのメモアプリでも構いません。
| 既存の記録 | 新たに加えるデータ | 目的 |
| 体調レベル(5段階) | 思考の交通整理の「信号」の数(その日に書き出した「思考のゴミ」の数) | 身体の波と、思考の渋滞がどれだけ連動しているかを客観視する。 |
| 睡眠時間 | 活動した時間(家事や外出など、エネルギーを使った行動) | 脳の充電量と、消費量がどれだけアンバランスかを把握する。 |
難しそうに見えますが、ざっくりで良いです。完璧にしようとすると疲弊してしまいます。
ステップ2:「トリガー(予兆)」の特定:パターンを見つける
記録をつけてしばらく経ってきたら、その数字や出来事にパターンがないか探してみます。「体調悪化の前に必ず起きている共通点」が出てくることがあります。これこそが「体調悪化のトリガー(予兆)」です。
このように、波は予測不可能なものではありません。この予兆を発見できた時が、「緊急行動計画」を発動し、波を食い止める最初のチャンスになります。
これを繰り返していくと、「○○をすると翌日、きつい」「△△が少ないと翌日は、ちょっと調子が楽」などのパターンが想像している以上にハッキリと出てきます。
応用:予測できた波に合わせて「行動計画」を立てる
トリガーを発見できたら、次は前回学んだ「投資マインド」を、具体的な行動計画に落とし込みます。
緊急行動計画(トリガー発動時)
トリガーが確認できたその瞬間から、何を「しないか」を事前に決めておきます。
| トリガーが確認された時 | すぐに発動する緊急行動(何をしないか) |
| 思考の交通整理の「信号」が連続で多い | 予定していた外出や、複雑な作業を全てキャンセルする。Xのチェックや情報収集を完全に遮断する。 |
| 体調レベルが2以下 | 「今日は休息という名の治療日」と自分に正当な理由を与え、最低限の生活(ご飯を食べる、水を飲む)以外は、横になることをノルマとする。 |
持続可能な目標行動計画(安定期)
トリガーを引かないように、普段から「少し物足りない」くらいでエネルギーを温存する計画を立てます。
「調子が良いからいつもより○○をする」と、調子が良いことを理由に行動を変えることが少なくなります。その分その時は少しもったいない気もしますが、回復エネルギーを温存できることで、結果として安定しやすくなります。
まとめ:客観視の習慣が「再発しない回復」に繋がる
波に飲まれてしまうのは、自分の体と心が発している「予兆(データ)」を無視してしまうからです。
「思考の交通整理」で頭の渋滞を客観視し、そのデータから「体調のトリガー」を見つけ出す習慣こそが、再発を未然に防ぎ、あなたらしいペースで前進するための最も論理的な方法です。
この「客観視の習慣」の次に、具体的にどのような「再発防止のための行動」を日常に組み込むべきか。次回の記事で詳しく解説していきます。
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【Satsuki式マインドセット】うつ病の「思考の燃費」を改善!紙とペンで客観視する「交通整理」の具体的方法
【うつ病との向き合い方】調子の波に振り回されない。「良い日と悪い日」の境界線と持続可能な回復ペースの掴み方

