はじめに:うつ病で頭痛が起こる、その理由
私もそうでしたが、頭痛は「うつ病」のサインの中でも、最も見過ごされやすい症状の一つです。
多くの方が「元々頭痛持ちだから」「疲れているだけ」と片付けてしまいますが、それは体が発するSOSです。うつ病で頭痛が起こる背景には、主に脳内の神経伝達物質のバランスの乱れと、極度の緊張が関係しています。
この記事では、長年頭痛に苦しんできた経験者として、うつ病で見られやすい2つの頭痛(偏頭痛と緊張型頭痛)の見分け方と、私が実際に試した対処法をご紹介します。
経験者が語る:うつ病で見られやすい2つの頭痛
うつ病やストレスが原因で起こる頭痛は、主に以下の2つのパターンに分けられます。あなたの頭痛がどちらに近いか、ぜひチェックしてみてください。
偏頭痛(片頭痛):痛みの場所が変わる、脈打つような痛み
偏頭痛は、血管が拡張することで周りの神経が刺激されて起こります。うつ病の回復期や、気分が変動する時に起こりやすいと言われています。
- 痛み方
ズキンズキンと脈打つような痛み(拍動性)で、頭の片側に起こることが多いです。光や音で悪化したり、吐き気を伴ったりすることもあります。これが起きると、作業や家事の継続は困難なほどの痛みです。
私の場合は、発作前からわずかな光や音、匂いに強い不快感が伴いました。そして閃輝暗点(せんきあんてん)という、視界の光がギザギザして、突き刺されるような感覚がありました。
階段の上り下りなど、体を動かすと痛みが強くなる性質もあります。
- 原因と発症のメカニズム
片頭痛の原因は完全には解明されていませんが、脳の血管と神経に異常が生じることによって起こると考えられています。
三叉神経血管説
何らかの刺激で三叉神経が活性化し、その末端からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの炎症性物質が放出されます。これにより脳の血管が拡張し、その周りの神経に炎症が起こることで、拍動性の痛みが生じます。
- 誘因(トリガー)
ストレスからの解放
ストレスで収縮していた血管が、ホッとしたとき(緊張が緩んだとき)に急に拡張することで発作が起こりやすいです。
女性ホルモンの変動
女性に多く、生理周期(エストロゲンの減少時)に合わせて発作が起きやすいです。
寝すぎ・寝不足
規則正しい睡眠リズムの乱れも誘因になります。
食事
チーズ、チョコレート、赤ワイン、カフェインなど、特定の食品が引き金になることがあります。
天候・気圧の変化
低気圧や温度変化も発作の原因になりやすいです。
- うつ病との関連性
●共通の神経伝達物質(セロトニン)の関与●
セロトニンは、気分の安定とうつ病に深く関わる物質であると同時に、片頭痛の発症にも関わっています。セロトニンの代謝異常や不安定さが、両方の症状を引き起こしやすくしていると考えられています。
●慢性的なストレスと悪循環●
片頭痛の激しい痛みや、吐き気・集中力低下などの症状が頻繁に起こると、日常生活や社会生活に支障をきたし、不安や抑うつ状態を招きやすくなります。この精神的な落ち込みが、さらに片頭痛を悪化させるという悪循環に陥ることがあります。
●合併率の高さ●
研究によれば、片頭痛患者の約30〜40%がうつ病を併発しているというデータもあり、片頭痛を持つ人は持たない人に比べて、うつ病の発症リスクが数倍高くなると報告されています。
緊張型頭痛:後頭部や首筋が締め付けられる痛み
緊張型頭痛は、ストレスや疲労で首から肩にかけての筋肉が緊張し、血流が悪くなることで起こります。うつ病の急性期や、不安が強い時に起こりやすいです。これは、うつ病と並行して起こりやすい、最も一般的な頭痛のタイプです。
緊張型頭痛は、日常生活に支障をきたすほどではないものの、慢性的に不快な症状が続くのが特徴です。
- 痛みの特徴
「ハチマキで締め付けられているような痛み」「頭に重いものが乗っているような重苦しさ」と表現される圧迫感や重苦しさを伴う痛みです。後頭部から首筋にかけて、頭の両側全体が痛みます。
軽度〜中等度ならば、寝込むほど激しい痛みではなく、日常生活や仕事は続けられることが多いです。
しかし多くのケースで、首や肩のこり、目の疲れ(眼精疲労)を伴うため、本人は継続的に不快感があります。片頭痛とは異なり、体を動かしても痛みは悪化しません。
吐き気や嘔吐、光・音過敏を伴うことはほとんどありません。
痛みが数時間から数日続く「反復性」と、毎日のように痛みが持続する「慢性(慢性緊張型頭痛)」があります。
- 主な原因
緊張型頭痛は、主に「身体的ストレス」と「精神的ストレス」の二つの要因が複雑に関係して起こります。
●身体的ストレス(筋肉の緊張)●
・姿勢の悪さ
長時間のデスクワークやスマートフォン操作、猫背などにより、首、肩、背中の筋肉に過度な負担がかかります。
・血行不良
筋肉が緊張して硬くなると、血流が悪化し、老廃物(疲労物質)が溜まって神経を刺激し、痛みを引き起こします。
●精神的ストレス(心の緊張)●
・ストレス・不安・抑うつ
精神的な緊張状態が長く続くと、脳の痛みを調整する機能がうまく働かなくなり、筋肉の緊張も相まって頭痛が引き起こされます。几帳面な性格や、責任感が強い人に起こりやすいと言われます。
- うつ病との関連性
緊張型頭痛は、その原因が精神的な緊張やストレスに深く関わっているため、うつ病や不安障害といった精神疾患と合併しやすいことが知られています。
●「頭が痛い」のではなく「心が痛い」可能性●
特に慢性的な緊張型頭痛は、単なる筋肉の凝りだけでなく、精神的ストレスが脳の痛みの感受性を高めている状態(中枢性感作)と考えられています。一部の慢性型では、「頭が痛い」という訴えがうつ病の身体症状として現れている場合があります。
- 治療の工夫
精神的ストレスの割合が大きい慢性緊張型頭痛に対しては、一般的な鎮痛薬(痛み止め)が効きにくいことがあります。その場合は、抗うつ薬などが脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)に働きかけ、痛みを軽減させる目的で使われることもあります。
私はこの緊張型頭痛で、勤務中に意識が朦朧として会社から病院に直行したことがあります。タクシーでいきましたが、「救急車を呼ぶべきレベルだった」と医師に言われました。決して侮れない頭痛です。
経験者が警鐘を鳴らす:頭痛を「薬でごまかす」ことの本当の怖さ
私は長期間、頭痛薬に頼り、薬の回数が増えていった経験から、「薬でごまかす」ことがいかに危険かを痛感しています。
- 依存と進行
私の場合、最初は週に1回だった薬の服用が、徐々に2回、3回と増えていき、限界に気づく日の2カ月前くらいには毎日3回を飲んでいました。本人は我慢しているつもりでしたが、薬なしではいられない状態です。
- 「薬物乱用頭痛」の危険性
薬を頻繁に飲むことで、逆に脳が痛みに敏感になり、頭痛がさらに悪化するという悪循環に陥ります(薬物乱用頭痛)。
「嘔吐」が習慣になる怖さ
頭痛がひどくなり始めると、薬の前に「先に嘔吐する」ことが習慣になっていました。これは、体が発する深刻なサインを自己流の対症療法でねじ伏せていた状態です。
自己判断によるこの行動は、摂食障害など他の深刻な問題にも繋がる危険性があります。どうか、この段階に来たら専門家の助けを借りてください。
経験者だから言える:頭痛への対処法
頭痛薬に頼り、薬の回数が増えていった経験から、私が効果を感じた対処法と、根本的な解決のために最も重要だったことをお伝えします。
痛みの種類別、体からのサインの受け止め方
- 偏頭痛・・・「とにかく休んで!」
拡張した血管を落ち着かせることが重要です。
①冷たいおしぼりや保冷剤などで冷やす。
②刺激を減らすために、暗く静かな部屋で横になる。
③私はコーヒーやコーラを飲むと少し楽になります。これはカフェインの血管収縮作用のためだと思われます。ただ、カフェインは体に合う合わないがあるようです。
- 緊張型頭痛・・・「緩めてあげて!」
凝り固まった筋肉を緩めて、血流を促進することが重要です。
①温かいおしぼりなどで、温める。
②首や肩をゆっくりストレッチする。
③私の場合こちらの頭痛には、塗るタイプの肩こり薬も効果がありました。血流改善作用が含まれているものが効果的です。
私は長年の経験で「冷やすか温めるか」「収縮させるか緩めるか」の判断ができるようになりましたが、間違えると激痛になります。自己判断せずに、専門医の指示を仰ぐのが最善です。
一般的に言われる予防法
一般的に、これらの頭痛の予防法として以下のようなことが言われます。
- 規則正しい生活
決まった時間に寝起きする。寝過ぎや寝不足を避ける。
- ストレス管理
趣味の時間やリラックスできる時間を作り、ストレスをこまめに解消する。
- 適度な運動
痛みのないときにウォーキングや軽いストレッチなどの有酸素運動を継続的に行う。
散々言われていることだと思います。そしてそれがちゃんとできていれば、おそらくうつ病の心配もする必要がないのだと思います。私はこれらの予防法では、すでに手に負えない状態になってしまっていたのだと思います。
根本的な解決は「仕事や環境から離れること」
私が頭痛薬の回数が増え、嘔吐までしていた状態から解放されたのは、最終的に休職に入ってからです。
頭痛は、体が「これ以上は無理だ」と訴える最後のSOSです。
- 薬の回数が目安
週に3回以上薬を飲むようになったら、それは対処ではなく「依存」であり、環境を変えるサインです。
- 他の身体症状と併発
頭痛に加えて微熱や下痢などの複数の症状が出始めたら、精神的な不調の可能性が非常に高いです。
頭痛を再発させないための「自分観察」習慣
限界に気づかなかった私に必要なのは、「自分に興味を持つ」ことでした。
頭痛を再発させないためには、薬を飲む前に「なぜ今、頭が痛いのか?」を記録する習慣が重要です。
- 頭痛が起きた時間、頻度
- その時の気分(不安、イライラ、無関心)
- 飲んだ薬の種類と回数
こうした体調ログをつけることで、頭痛が「疲労のサイン」なのか「精神的なSOS」なのかを客観的に把握できるようになります。
最後に:あなたの頭痛は「気のせい」ではありません
かつての私のように、「頭痛くらい…」と我慢している人がいたら、どうか無理をしないでください。
あなたの頭痛は、あなたが戦っている「見えない敵(ストレスや不安)」が体に表れているサインです。薬でごまかすのではなく、そのサインに心から耳を傾けてあげてください。
【重要】免責事項と信頼性について
ここに掲載している内容は、すべて私個人の実体験に基づいてお話していますが、医学的根拠はございません。 専門的な治療が必要な場合は、必ず医師の意見を仰いでください。
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