【闘病体験記】うつ病診断後、周囲が急に『話を聞いてくれなくなった』理由をSatsuki式で論理分析

闘病体験記

はじめに:話半分で処理された専門性

これは、私が退職届を出した際に産業医と面談を行い、うつ病の疑いが出た直後のことです。心療内科の受診予約の都合で2週間程度の期間がありました。

私は会社の組織を管理する立場にあったため、万が一に備え、それまで以上に取締役と引継ぎ会議を重ねました。組織の改善案、今後の管理体制について、私は論理的に、専門家として説明しました。

しかし、私が出会ったのは、「私の話は話半分でしか聞いてくれない」という現象です。

相手の顔には、「うつ病患者の発言」という安易なフィルターが貼られ、私の言葉が持つ「組織管理者としての専門性」は全て否定されていました。まるで、私の発言は「被害妄想」「病気による思い込み」として処理されているようでした。

このとき感じたのは、病気による苦痛よりも、自分の存在が「うつ病患者」という分類に押し込められ、本来持っていた『専門性』を全て否定されたという、「偏見」による強い苦痛でした。

私自身、幼少期から「外国人だから」「母子家庭だから」など、見た目や分類で判断されることを心底嫌ってきました。病名一つで、私の発言の論理性まで否定されるという現象は、私の最も嫌う「偏見」が根底にあると分析します。

現象分析:なぜ周囲はあなたの話を聞かなくなるのか?

周囲が急に「話を聞かない」という行動に出るのは、あなたの病気に対する彼ら自身の「論理的防衛」が働いているからです。これはあなたの存在価値とは無関係です。

認知コスト削減のための「ラベル貼り」

周囲は「うつ病=ヤバい」「被害妄想が強い」という安易な『ラベル』を貼ることで、あなたという複雑な人間を理解する認知コストを大幅に削減しようとします。

  • 論理
    あなたの病状や複雑な苦しみを理解するのに、彼らはエネルギーを消費したくないのです。だから、最もリスクが少なく、最も簡単な「うつ病患者」という分類に押し込めるのです。
  • 組織での実例
    私の「専門的な組織管理者」という事実が、「うつ病患者」という分類よりも軽視され、話を聞くのをやめてしまうのは、彼らにとって最もコストが低い判断だったということです。

ビジネスの立場から考えると、それは正しい判断に当たるのかもしれません。「うつ病患者」という分類にある不安定な人物の言葉を信用して、ビジネスを失敗するわけにはいかないのです。

「専門的な組織管理者」という分類に、「うつ病患者」という分類がどれほど影響を与えているかも見えないわけですから。人間は、「見えないもの」「把握できないもの」を恐れます。一般的には取締役の判断は正しい行動なのかもしれません。

ただし、結果論から言えば、その時の私の言葉を信用せず、その後の運営に生かさなかったことは間違いでした。組織の優秀な人材はそれから半年のうちにほとんど退職してしまい、他部署からの大規模な異動で補う必要に迫られていました。

感情の防衛本能(高EE)

うつ病のネガティブな感情に感情的に巻き込まれまいとする防衛反応(高EE:High Expressed Emotion)も働きます。会話を聞くこと自体が、自分のエネルギーを消耗させると判断しているため、無意識に距離を取り、会話を回避します

「偏見」による二次被害の論理化

話を聞いてもらえないことの最も非論理的で残酷な部分は、「偏見」による二次被害が生じることです。

  • 被害
    「うつ病」という分類で判断された結果、専門的な話(組織改善)まで聞いてもらえなくなり、回復以前に社会的役割まで奪われるという被害が生じました。同じ言葉を言っても、うつ病疑いが出る前と後では、反応がまったく異なり、無力感が私を打ちのめしました。

過剰な配慮という名の「腫れ物扱い」

話を聞いてもらえないという消極的な偏見とは別に、過剰な配慮という形で偏見が表れることもあります。

実体験:
2年の休職を経て、最終的に退職の意向を会社に伝えた時が顕著でした。話す内容は「辞めます」「分かりました」だけなのですが、「会社のせいにされないように」と警戒しているのが明らかでした。私の言葉を遮らないようにしたり、結論は私が言葉にするのを待ったりと、話をこちらが切り上げるまで、決して先に進めないのです。

私としては、早々に決着をつけて帰宅しなければエネルギー切れを起こす危機があります。それにもかかわらず、その話し合いは「引き留めている体」の方向で実施され、1時間半以上に及びました。2年もブランクが空いている社員を取締役が直々に家の近くのカフェまで来てまで、欲しがるわけがありません。それはまるで腫れ物に触るかのような扱いでした。

Satsuki式分析:
これは、個人の専門性や意志を尊重しているのではなく、「うつ病患者との対話」というリスクを避けようとする相手の自己防衛です。

  • 相手の目的
    「余計なことを言って責任を負いたくない」「訴訟などのトラブルを回避したい」
  • 結果
    どれだけ真摯にエネルギーを使って話をしても、「会社のせいにされないための返答」に専念され、私の言葉の真意や本質は、まったく聞いてもらえませんでした。「会社としては引き留めていますが、あなたの意志で退職するのですよね?」というスタンスを強調したかったのだと思います。

Satsuki式対応:孤独を「自己防衛空間」と再定義する

話を聞いてもらえない状況は、あなたの回復のエネルギーを無駄に消耗させます。孤独感から脱却し、回復を最優先するためのマインドセットをインストールします。

期待値の強制リセットとエネルギー保護

  • マインドセット
    「他人に自分の苦痛の全容を理解してもらうのは不可能」と論理的に断言し、期待値の外部依存を強制的に停止します。どれだけ説明しても、上記の現象が起きる限り理解を期待するのは無理があるのです。
  • コスト認知との連携
    理解を求める努力は、あなたの有限なエネルギーを無駄に消耗させる「無駄なコスト」であると認定し、エネルギーの流出を止めます。うつ病患者のエネルギーは、貴重です。その貴重さを理解したうえで、そのエネルギーを使うべき事柄ではないと認定しましょう。

伝達情報フィルターの設置と機能に集中

話をする相手を「プロ(医師・カウンセラー)」「協力者(家族など)」に分け、伝える情報の内容をフィルタリングします。

  • 職場での対応
    「聞いてもらうこと」が目的ではなく、「記録と責任の所在を明確にすること」という機能的な側面にのみ集中します。相手が話半分でも、記録(証拠)を残すという機能が果たされていれば、あなたのミッションは達成です。

私は幸いにも、この機能的な側面が実現できていたので、引継ぎ会議から2年後に、取締役から「あの時の話を受け入れておけば良かった」という言葉をもらうことができました。

「孤独」を「静かな再構築空間」と再定義する

周囲が離れていった結果生まれた孤独な時間は、マイナスではありません。それは、「誰もいない、思考の交通整理と自己再構築に専念できる静かな環境」です。

  • 利用する
    うつ病だと聞いた程度で離れていく程度の人は、あなたの人生にとっての重要人物ではありません。この静寂を回復のための資源として利用し、他者の期待や偏見から完全に切り離された場所で、「Satsuki式マインドセット」の論理的再構築を進めるのです。

結論:孤独を回復のための資源に変える

周囲の反応は病気への理解不足からくるものであり、あなたの存在価値とは無関係です。話を聞いてもらえないからといって、あなたの存在価値が落ちたわけではありません。

彼らの偏見にエネルギーを消耗させるのではなく、生まれた孤独な時間を自己回復のための資源として利用し、論理的な再構築を進めましょう。

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