はじめに:自分の状態を把握することの重要性
うつ病は、常に不安定な状態にさらされ続けます。昨日できたことが今日はできなかったり、今日できたことが明日はできなかったりします。
それは、体調の波が大きく関係をしています。昨日と同じだけの充電を今日持っているとは限らず、今日感じている充電の枯渇を明日は脱しているかもしれない。
その不安定な体調の波を少しでも把握するために、パターンを探る方法は前の記事でも紹介しました。
それでもそれは、少し精度が高い天気予報のようなものです。
天気予報を見て計画や準備する持ち物を精査する作業は、日常生活においてとても重要です。楽しみな外出の時も、少し気が重い仕事の出張でも、準備するために天気予報は必ずと言って良いほど確認をすると思います。
うつ病の体調の波について、独自で天気予報を作成して確認することもそれと同じで非常に重要です。天気予報を見ずに、当日になって外に出てから「雨だった」「快晴だった」と一喜一憂するような、天気予測技術がなかった時代のような生活、いわゆる体調ガチャをしないようにしてください。
体調の波の天気予報は、必ずあなたを助けてくれます。
しかし、その天気予報があっても生活が難しいのがうつ病の怖いところです。それは、天気とは違い、「その瞬間の自分の状態が自分の認識とは異なることがある」ということがあるからです。
「快晴だと思っていたら実は霧のような雨が降っていて、いつの間にかずぶ濡れだった。」ということがうつ病では起こり得ます。それだけ、「今、その瞬間」の自分の状態を把握するのが難しい病気でもあるのです。
今回は「今、その瞬間」の体調の波を把握する方法についてお伝えしていきます。
きっかけは妻の質問
この方法に気づいたきっかけは、妻からの私への質問でした。日頃から妻は私の体調を気遣ってくれます。
病気に理解がない人が多い中で、一番近くにいる人が病気を理解して気遣ってくれることは大変有難いことです。決して「当たり前」のことではありません。
そしてその妻も、私の体調を測りかねていたのだと思います。どうにか状態を把握したいと考えたのでしょう。彼女は私に質問しました。
「今、何%元気?」
通常であれば、自分の元気度をパーセントで表現することなどないと思います。しかし、妻は軽い感覚で聞いてきます。そして私も軽い感覚で「48%」などと答えます。最初は基準などなにもなく、感覚的なもの、体感的なものでした。
それを聞いた妻も、「お、ちょっと元気やん。」「あら、あんまり調子よくないね。」くらいのコメントをする程度です。「じゃあ家にいなさい。」とか、「それなら散歩して来たら?」などその数字の度合いでなにかの変化を求めるようなこともありませんでした。
そのやり取りを日常的に繰り返していく中で、私は「今まで以上に、自分の状態を把握できている」ことに気づきました。
なぜ、この方法が有効だったのか? それは、『自分の体調を問われるという外部的なトリガー』によって、『内省(体感を測る行為)』を促されたからです。
うつ病当事者は、自分の状態を能動的に把握するエネルギーすら枯渇しています。この妻の質問が、脳の負荷をかけずに、客観視へのスタートボタンを押してくれたのです。」
最低限のルール設定
うつ病の波は、日によっても変化します。そして、一日の中でも当然変化します。起きてすぐから午前中はぐったりしていたのに、夕方からは元気になるということも日常です。
なぜ、この何気ない質問が自分の体調の状態把握につながったのかを分析して、ルールを決めました。
うつ病にかかる前の自分を100%に設定
一番大切な基準は、「100%がどういう状態に当たるか」という点です。これは必ず、自分がうつ病と診断される前の姿に設定してください。病気にかかっていない、自分が想像する元気な頃の自分です。理由は以下の2点です。
感覚で答える/考えずに答える
どれだけ考えて答えたところで、機械で計測するような明確な数値にはなりません。そのような数値については、スマートウォッチなどの文明の利器に任せてしまいましょう。
必要なのは、最新機器でも数値化できないあなたの体感を数値化することです。その際に、以下のことは避けるようにしてください
この2点を避ける簡単な方法として、質問されたら2秒以内に答えるようにする方法は有効です。とっさに聞かれて、とっさに答えると素直な自分の体感数値が口から飛び出してきます。
その瞬間の体感数字を答える
この方法で把握したいのは、その瞬間の自分の調子です。1日を通してや、週を通しての体調は「三行日記」や「思考の交通整理」で把握ができます。
そのため、その瞬間にフォーカスして答えてください。「午前中調子が悪かったから、その分を差し引いて・・・○○%」みたいな考え方は不要です。
自分を理解することは回復への道
この方法で分かることは、感覚的なものでしかありません。しかしこの感覚こそが、うつ病当事者を振り回し、翻弄する事柄であることも間違いありません。
そしてそれは、安定することはなくほんの数時間でも変化します。「さっきまで調子良かったのに、なんか感覚が変わってきたな」という変化に気づくことができれば、エネルギーを使いすぎていることに早めに気づくことが出来ます。
この数値が低く出た瞬間、あなたは「エネルギーを使いすぎている」という感覚的でありながらも論理的な警告を受け取ります。この警告は、前回記事で設定した『塵レベルの習慣』を中断する論理的な根拠となり、無理な活動を感情ではなく仕組みで停止することができるのです。
オンラインゲームのように、自分の体力や精神力に数値が見えていてゲージで頭上に表示されているような状態であれば、闘病生活はもう少し楽になるのかもしれません。
しかし、そのようなゲージはありません。それに似た基準を作り、体感を可視化して把握することは、自分のコントロールしにくい状態の体と脳を制御しやすくする有効な方法の一つです。
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