【実践】思考の交通整理をやってみた!脳の渋滞を解消し、エネルギーを回復させる具体的な4ステップ

Satsuki式マインドセット

はじめに:抽象的な「思考」を「データ」に変える

抽象的な「不安」や「悩み」が、うつ病当事者の脳のエネルギーを最も消費します。それは、脳が処理できないほどの大量の「思考のゴミ(未処理の不安やタスク)」を抱え、常に「交通渋滞」を起こしている状態だからです。

私はこの状態を改善するため、「思考の交通整理」というメソッドを考案しました。これは、感情を挟まず、頭の中にあるものを全て「処理すべきデータ」として客観視する手法です。

この記事では、この「思考の交通整理」を私自身が実際に行ったレポートを公開します。

私の脳内は「赤信号だらけ」だった

私が思考の交通整理を始めたのは、診断を受け、仕事の責任から解放された後も、脳の疲労が一切取れなかった時期です。当時の私の脳内は、次のような「思考のゴミ」で溢れていました。

  • 過去の怒り
    私が成功させた仕事なのに、どうしてあの人がやったことにされてしまったのだろう。
    私はなんで、あの場面であんなことを言われないといけなかったのだろう。
  • 不確定な未来
    いつになったら回復するのだろうか。
    回復したら転職するかな。どこか良い会社見つかるだろうか。
    復職するように言われるかな。またあの人と働くのは嫌だな。
  • やるべきことの重圧
    もうすぐ薬がなくなるなあ。ちゃんと病院に行けるだろうか。
    会社に提出する書類を書かないといけないなあ。
  • 会社の運営の心配
    忘れられがちなあの業務は、ちゃんと遂行されているのだろうか。
    私がいないことで、○○さんと△△さんに負担が大きくなってないだろうか。

これらのゴミは、どれも考え始めると膨大なエネルギーを要求し、一つに手を付けると他の不安が雪崩のように押し寄せる「赤信号だらけ」の状態でした。

Satsuki式:交通整理の「リアルな」実践手順

頭の中を空にするため、私は以下の3ステップを実践しました。ポイントは、「感情を一切入れない論理的な作業」として扱うことです。

ステップ1:強制的な「全排出」ルール

考えるのを止め、頭に浮かんだことを全て紙に書き出すというルールを設けました。

私が実際に使ったのは、ノートではなく小さなメモ帳です。オフィスで電話の横に置くような、すぐに千切って誰かに渡すこともできるようなタイプのものを使用しました。

そのメモ帳に一枚に一つ、信号を書いていきます。

そして、一度に全部書き出そうとするのではなく、思いついた時(=信号に気づいた時)に手が届くところにあるメモ帳に書くようにしました。

一度に全部書き出そうとすると大量のエネルギーを消費します。やり始めるまでの心の準備だけで疲労します。それを避けるために、構えず小さな作業として切り分けて実行しました。

  • 信号を書くときのルール
    不安、後悔、タスク、疑問、全てを短い言葉で書き出します。このとき、「これは書く価値があるか?」などと考えたり、文章を整えたりする行為は厳禁です。感情を挟むと、そこで交通渋滞が再発します。頭に浮かんだことをそのまま書くようなイメージです。
    例)あの時のあいつの言葉、ムカつく!
    例)職場に残された○○さんが心配!
    例)回復して来たら仕事、どうしよう
  • 書いた信号の処理のルール
    書いた信号は、すぐに交通整理しないようにしました。浮かんだときは、その言葉と共に怒りや不安や申し訳なさなどの感情が共存しています。すぐに処理しようとすると、そこでまた思考の渋滞が始まってしまうからです。

多い時には約50個もの「ゴミ」が排出されました。これは、脳が同時に50個の信号を処理しようとしていたことを示しています。

ステップ2:「信号」振り分けによる処理負荷の分類

自分のエネルギーに余裕がある時に、書き出した全ての「ゴミ」を、以下の基準で論理的に分類します。

  1. 【青信号(処理すべきタスク)】: 「今、具体的な行動で解決できるもの」
    例:「会社に提出する書類を書かないといけないなあ。」
  2. 【赤信号(処理不要な情報)】: 「今、行動しても解決できないもの」
    例:「あの時のあいつの言葉、ムカつく!」
    例:「回復したら転職するかな。どこか良い会社見つかるだろうか。

50個のゴミのうち、「青信号」はわずか5個でした。残りの45個は、脳がエネルギーを浪費して考え続ける必要のない「赤信号」だと客観的に証明されました。

ステップ3:「赤信号」の廃棄による処理負荷の軽減

そして赤信号の事柄については、その事柄が書かれた紙をメモ帳から切り離して丸めて捨てます。私が千切れる小さなメモ帳に書いた理由がここにあります。

「紙に嫌なことを書き出して、それを丸めて捨てる」という行為は、メンタルヘルスに良い効果があると、最近の研究でも実証されています。

これは、心理学における「カタルシス効果(浄化作用)」や、ネガティブな感情を紙に「投射」し、それを物理的に「廃棄」することで、その感情も一緒に取り除かれたように処理される「思考の分離」といったメカニズムが関係していると考えられています。

  • カタルシス効果(感情の解放)
    漠然とした不安や怒り、悲しみといったネガティブな感情を全て紙に書き出すことで、心の中のモヤモヤを外に吐き出し、ある程度軽くすることができます。

そして、単に書き出すだけではネガティブな感情が維持されてしまうのに対し、「捨てる」という行為が、その紙に投射された感情そのものを捨て去る効果を生むようです。

ステップ4:青信号の「負荷」を測定し、取り掛かるものを決める

「青信号」に分類されたタスクにも、実行負荷(エネルギー消費量)の大小があります。

  • 負荷を想像して数値化
    各青信号タスクに、「完了までに必要なエネルギー(負荷)」を主観的に測定し、パーセンテージで書き込みます。
    (例:電話をかける=40%負荷メールをチェックする=5%負荷
  • 今やれるものの確認
    自身の体調(その日の「何%元気?」の数値など)と相談し、その日の「塵レベル」で実行可能な事柄だけに取り掛かるようにします。その日無理だと感じるものについては、「エネルギーの回復を待つ」と決めるだけで十分です。それだけでそれは「思考のゴミ」ではなくなります。

交通整理で私の脳に起こった3つの変化

この交通整理をルーティン化したことで、私の脳と体調に明確な変化が現れました。

変化1:「思考のゴミ」が具体的な「タスクリスト」に変わった(霧が晴れた感覚)

漠然とした「不安」は、最もエネルギーを消費します。交通整理によって、漠然とした不安が「完了すれば消えるタスク」として可視化され、「処理しきれない絶望感」が「一つずつ片付けられる可能性」へと変わりました。これは、濃い霧が晴れたような感覚です。

変化2:脳の「エネルギー温存」が始まった(不採算事業の停止)

脳は、紙に排出された「赤信号」タスク(後悔や不安)を、「これはもう処理済みである」と認識し始めます。その結果、無意識に赤信号を考え続けるという「思考の癖」が減少し、無駄なエネルギー消費が止まりました。これは、前回解説した「強がりをやめる勇気」と同じく、不採算事業の論理的な停止です。

変化3:「まだできていない」という罪悪感からの解放

交通整理で得られた「タスクの総負荷」と、「何%元気?」の数値(体感)を日々比較することで、自分の状態を客観視できるようになりました。タスクがまだできていないのは「怠け」ではなく、「負荷の高いタスクだから」という論理的な事実として納得できるようになりました。

まとめ:日々の交通整理は回復を早める

思考の交通整理は、一度きりの作業ではありません

工事中の道路で、交通整理を辞めてしまうとすぐにまた渋滞が始まってしまいます。それと同じで一度きりの交通整理ではなく、渋滞が気になりだしたら日々行うようにしましょう。

あなたの脳を「思考のゴミ」から守り、回復に必要なエネルギーを温存するこの仕組みは、あなたの回復を早めるための最も論理的で効果的なルーティンです。

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