はじめに:良い「材料」があっても「通信網」が錆びていては届かない
前回の記事で、心の安定に必要なセロトニンの「材料(トリプトファン)」についてお話ししました。
しかし、いくら良質な「材料」があっても、脳内の「通信網」が錆びついていては、メッセージはうまく伝わりません。
私が以前経験した、情報処理能力が著しく低下する「脳の通信制限」。この状態は、脳の神経細胞のネットワークがうまく機能していないサインです。再発を防ぐには、この通信網をスムーズに動かすための「良質なオイル」が不可欠なのです。
今回は、脳の「通信速度」を上げ、ストレスによる「脳の炎症」を鎮める「天然の抗炎症剤」とも言える良質なオイルを、調理不要・無理なく摂る方法を解説します。
今回も「簡単に摂る」を重要視しています。私も経験していますが、回復のために消耗してしまうことは、消耗以上にダメージを受けてしまうので避けることに越したことはありません。
なぜ「脳のオイル」が必要なのか?(オメガ3脂肪酸の役割)
私たちの脳の約60%は脂肪でできています。その中でも特に重要なのが、青魚などに多く含まれるオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)です。サプリメントのCMなどで耳にすることが多い成分ですが、再発防止の基本は食事です。薬やサプリメントは最終手段。長く続けるには経済的な負担もあります。まずは、この「脳のオイル」を日常の食材から無理なく摂ることを習慣にしましょう。
この「脳のオイル」には、主に2つの重要な役割があります。
通信速度の向上
オメガ3脂肪酸は、神経細胞の膜を柔らかくしなやかに保つ働きがあります。これにより、神経伝達物質の受け渡しがスムーズになり、情報のやり取り、つまり「通信速度」が向上します。思考がクリアになったり、集中力が高まったりする効果が期待できます。
脳の炎症を鎮める「消防士」
長期的なストレスは、脳に目に見えない微細な「炎症」を引き起こすことが、近年の研究でわかってきました。この「脳の火事」とも言える状態が、うつ病の再発リスクを高める一因とされています。
オメガ3脂肪酸には、この炎症を鎮める強力な「抗炎症作用」があります。良質なオイルを摂ることは、再発という「火事」を防ぐための「消防士」を脳内に常駐させるようなものなのです。
【調理不要】今日から始める「脳のオイル」習慣 3選
簡単に摂れる方法をお伝えします。キッチンに立つのが億劫な日でも、全く問題ありません。むしろ、これから紹介する方法は、調理しないことが鍵になります。
サバ缶・イワシ缶:「調理不要の最強の脳飯」
DHA・EPAの王様といえば、サバやイワシなどの青魚です。これらを最も手軽に摂る方法が缶詰です。
【無理なく続けるヒント】
味噌煮缶や水煮缶を、調理せずにそのまま食べてみてください。もし余裕があれば、前回の記事で紹介した豆腐の上に乗せるだけで、タンパク質も同時に摂れる立派な「脳に優しい食事」になります。
私は缶詰めがあまり得意ではないので、いりこをおやつ替わりにポリポリしていました。それでも十分に取れます。
亜麻仁油・えごま油:「かけるだけ」の簡単習慣
植物性のオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)が豊富なのが、亜麻仁油やえごま油です。最近では、スーパーなどでも手軽に買えるようになりました。
これらのオイルは熱に非常に弱いため、絶対に加熱しないでください。せっかくの良い効果がなくなってしまいます。
納豆やヨーグルト、温め終わった味噌汁など、いつもの食事にスプーン一杯「かけるだけ」でOKです。味もほとんど変わらず、手軽に脳のオイルを補給できます。
くるみ(ナッツ類):「おやつの置き換え」
ナッツ類の中でも、特にくるみはオメガ3脂肪酸を豊富に含みます。
【無理なく続けるヒント】
普段のおやつを、一握りのくるみに置き換えることから始めてみましょう。個包装のものをテーブルに置いておけば、小腹が空いた時に罪悪感なく、手軽に脳をサポートできます。
注意点:脳の通信を妨げる「悪いオイル」
少しだけ注意したいのが、脳の炎症を促進してしまう可能性のある「悪いオイル」です。マーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸や、多くの加工食品に使われる一部の植物油などが挙げられます。
しかし、これらを完璧に避けるのは困難ですし、そのストレスが毒になります。まずは「良いオイルを意識して増やす」ことを心がけましょう。それだけで、自然と体内のオイルバランスは整っていきます。
結論:「脳のオイル交換」で、しなやかな心を育てる
車のエンジンオイルを定期的に交換するように、私たちの脳も良質なオイルを必要としています。それは、ストレスに負けないしなやかでスムーズな思考を維持するための、最も簡単なメンテナンスです。
完璧を目指す必要はありません。
「今週、いつもの食事にサバ缶を一度プラスしてみませんか?」
「明日の朝、ヨーグルトに亜麻仁油を数滴たらしてみませんか?」
その小さな一滴が、あなたの脳を未来のストレスから守る大きな一歩になります。
【重要】免責事項と信頼性について
ここに掲載している内容は、すべて私個人の実体験と、一般的な知識に基づいてお話ししています。
この記事は、医師や医療専門家による医学的な診断、治療、またはアドバイスを代替するものではございません。
医学的根拠はございません。専門的な治療が必要な場合、必ず内科・脳神経外科、または心療内科・精神科などの専門医の意見を仰いでください。
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