うつ病からの回復に役立った「三行日記」:1244日継続できたSatsuki式マインドセット

Satsuki式マインドセット

【始めに】 うつ病で日記が続かなかった私が1244日継続できた理由

私は元々、日記なんてつけるタイプではありませんでした。たまに思い立ってつけていた時期もありましたが、長くて1ヶ月続けばいい方。3日と続かないことも度々ありました。

そんな私が、メンタル回復のためにと始めた「三行日記」は、今でもつけています。今日の日記で1244日目と表示されています。3年半近く、毎日続いていることになります。

この三行日記が、私の地獄のような毎日から抜け出す最初の一歩になりました。

長く続いたのは、「うつ病でエネルギーが枯渇した私でもできる」ように、徹底的に簡略化し、独自のルール(Satsuki式)で実践したからです。

今回は、私が実際にやって効果を実感した「三行日記」について、そのメカニズムと、長く続けるために大事だと思った具体的な方法をお伝えしていきます。

「三行日記」の基本ルール:なぜ「良かったこと3つ」が回復に必須か

「三行日記」にはいくつかパターンがあるようですが、私がやったのは「寝る前にその日に起きた良かったこと」を3つ書き出すというものです。

なぜ『三行』なのか? それは、「書くエネルギー」を最小限にし、「ネガティブな情報」を多く書く余地を与えない、ということを踏まえてのルールです。

三行日記には、ポジティブなこと以外に「良くないこと」「良かったこと」「明日の目標」の3つを書く形式もあります。こちらは、良くない出来事を客観視し原因やパターンを確認することで、自律神経を整える効果などが期待されています。

目的によって、「楽しかったこと」「嬉しかったこと」「感謝できること」を一つずつ、など項目を変える手法があります。

うつ病の回復を目的とする場合は「ポジティブな出来事を3つ」書き出す形式が、ネガティブな思考の連鎖を断ち切り、幸福感を高めるために特に有効とされています。

「三行日記」がうつ病に良い4つの理由(科学的な根拠)

なぜ、たった三行の記録がうつ病の回復をサポートするのでしょうか。「三行日記」が良いとされる理由は、主に以下の4つが挙げられます。

ポジティブな出来事に意識を向ける練習になる

  • うつ状態にあると、どうしてもネガティブな考えや出来事に意識が向きがちになります。
  • 三行日記では、一日の終わりに「良かったこと」を無理にでも探すことになります。この作業を通じて、脳がポジティブな情報を探し、拾い上げる訓練になります。
  • この習慣を続けることで、自動的にネガティブな感情を排除し、ポジティブなことに目を向ける心のクセがついていきます。

記憶のゴールデンタイムを有効活用できる

寝る前の15分間は「記憶のゴールデンタイム」と言われ、そこで考えたことが最も記憶に残りやすいとされています。

このタイミングでポジティブなことを書き、それをイメージしながら眠りにつくことで、寝ている間も脳がポジティブな状態を維持しやすくなり、睡眠の質の向上や、翌朝の気分に良い影響を与えるとされます。

自己肯定感と客観性の向上

良かったことや小さな達成を記録することで、「自分にも良いことがあった」「自分は価値ある人間だ」と感じ、自己肯定感を高める効果があります。

また、日記として出来事を客観的に書き出すことで、自分を冷静に見つめ直す機能も働き、自己認識や客観性が高まり、不安やストレスを軽くあしらう「レジリエンス」の向上につながると考えられています。

継続しやすい

「三行だけ」という簡潔さが大きな利点です。長く書く必要がないため、うつ状態で集中力や意欲が低下している状態でも負担になりにくく、継続につながりやすいです。

これは、情報処理能力が低下し、エネルギーが枯渇したうつ病の脳にとって、最も低負荷なセルフケアであることを意味します。

【実証済み】うつ病の私でも3年半続いた「Satsuki式」のやり方

「うつ病にいいらしいよ」と言われても、それを実行するエネルギーが足りないのがうつ病です。

私も三行日記の話を聞いた時、「良さそうだけど、続けられそうにないかも。」と思いました。正直、寝る前の一番くたくたな時間に、そんなに頭を使うエネルギーがあるとは思えませんでした。

そこで、私が実践した「これならできる」と思えるところまで簡略化した独自ルールをご紹介します。

紙とペンを捨てる:スマホで手軽さを最優先に

寝る前に日記をつけることには理由がありましたので、そこは変えないようにしました。

ただ、わざわざ「日記帳とペンを持って」と考えるとうんざりします。そこで、寝る時に必ず近くにあるスマートフォンを使うことで、行動へのハードルを極限まで下げ、「やらない理由」をなくしました。

三行日記用のアプリや、スマホのメモアプリで十分です。種類は豊富にありますので、自分に合うものがあればそれで良いと思います。

他人と共有はしない:自分だけの日記と徹底する

アプリには、自分が書いた日記と誰かが書いた日記を共有しあえる機能がついているものがあります。Xのように、「いいね」や「コメント」できる機能もあるアプリが大半です。

私はこれらの機能をすべてオフで使いました。他人に見られると思うと、それなりのことを書かないといけないと構えてしまい、疲れてしまいます。そして、他人の日記を見ると自分と比べてしまいます。

実際、数日他人と共有機能をオンにしていましたが、「今日はジムに行きました。最近行けてなかったので、さわやかな汗をかいてハッピー♡」みたいな、誰も得をしない日記が多数流れてきます。

それと自分を比べて気分は下がりますし、自分が書く気もなくなります。この日記は誰かに見せるためではなく、自分だけのためだけに書くものと徹底しました。

必ず3つ書く(多く書かない):リハビリと割り切る

たくさん書こうとすると、書く前に疲れてしまいます。うつ病の時はそういうものです。

ですので、「3つだけ書く」と決める。たくさん書かない代わりに、「必ず3つは書く」と決めます。

最初は、3つの良いことすら見つかりません
私の初日の日記は、

  • スタッフの面談が予定通りできた
  • ゴリパラ見聞録が面白かった(テレビ番組のことです)
  • 新しい洗顔を使ってみた

これです。「新しい洗顔」の項目、頑張って探したんだろうなと思います。

良いことを見つけることが、すでにリハビリだと捉えてください。

1項目1行と決める:脳への負荷を最小限に

「3つだけ書く」と同じく、長く書かないと決めます。

「○○して、●●なので明日は△△~~」と書くのは、脳の情報処理量が多すぎます。「1行だけ書く」と決めると気持ちが楽に書けます。

回復するに従って、「どうしても4つ目が書きたい、どうしても2行目が書きたい」と思う日が出てきます。その時だけ書けばいいのです。

最初から構えると、何もできません。

【最も重要】「~できた」「~!」で終わるポジティブ変換術

これは私が途中から取り入れた、最も効果の大きかったマインドセット変換ルールです。

『語尾を「~できた」で終わらせる』

語尾を「~できた」で終わろうとすると、多少マイナスなことでもプラス要素として書くことが出来ます。「13時まで寝ることができた」であれば、本当は午前中に起きた方が良かったとしても、「13時まで寝てしまった」と自分の受け取り方は全然異なります

頭の中で「その分、しっかり休めた」に変換ができます。些細なことですが、毎日の積み重ねで自己肯定感に大きな違いが出てきます。

『最後に「!」をつける』

書いた事柄の最後に「!」をつけることで、文字にした時に「すごく良いことだった」と強く感じることが出来ます。

  • 社員研修を頑張れた
  • ご飯が美味しかった
  • 20時に帰って来ることができた

これも始めて数日の私の日記ですが、これに「!」をつけるだけで

  • 社員研修頑張れた!
  • ご飯が美味しかった!
  • 20時に帰って来ることができた!

見た目と印象がずいぶんと変わります。

同じ事柄でも、この印象の違いはすごく大事なことです。「良いことがあった」と自分に気づかせ、気持ちを盛り上げるための技術です。

続けたから分かった効果:感情が動き出す瞬間

毎日、自分では自覚していないながらも無理している状態でした。寝る前に浮かぶことはその日あった嫌なことや、反省。それから次の日の仕事のこと。夢の中でも仕事をしているのが当たり前の日常でした。

その日、何が良いことで、何が嫌なことだったのかなんて、考える余裕はありませんでした。

それがこの三行日記をつけるようになったことで、「なにか良いことなかったかな?」と考える時間ができました。そして、「久しぶりに奥さんと一緒に食べたアイス美味しかったな。」「仕事で○○できたの良かったな。」「台風でなにも被害なくてよかったな。」など、そのまま気づかず通り過ぎてしまう小さな幸せを思い出して、一日を終えることができるようになりました。

一日の最後にマイナスを少しだけプラスに寄せて終わることができるのはありがたいことでした。それを繰り返していくうちに、「良かったこと」に気づくのがうまくなります

休職に入ってすぐの一番症状がひどい時は、

  • たくさん寝れた
  • ご飯が美味しかった
  • テレビたくさん見れた

これの連続なので、いかに感情が固まっているかが分かります。

日に日に書く内容が変わっていることに気づき始めた時には、自分の回復を自分でコントロールできているという自信につながっていきました。

【まとめ】 回復とは、自分の回復力を引き出し「良い出来事」に気づくこと

うつ病の治療には、様々な薬や手法があります。

しかし、私が思うのは最終的に自分の体が持っている回復力を使うしかないということです。しっかり休んで、疲労骨折した骨をつなげて、徐々に筋肉で補強していくのと同じイメージです。

骨折した時も鎮痛剤や栄養補給薬などはあるかもしれませんが、骨をつなげるのも筋肉をつけるのも結局は自分です。

骨がつながってすぐ全力疾走すれば、骨はまた折れます。徐々に軽いトレーニングから始める必要があります。

最初の基礎トレーニングとして、三行日記は手軽にできる、最高のツールです。自分の周りに落ちている「良い出来事」に気づくことから始めることを、強くお勧めします。

この三行日記は「Satsuki式マインドセット」の基礎であり、「再発防止のための習慣」の第一歩です。さらに回復のフェーズを進めるための具体的な習慣や考え方について、他の記事でも詳しくご紹介しています。