とにかく本が大好き
私は、幼少期から本が大好きでした。常に本と触れ合っていましたし、食べるにも困るくらいお金がない時も、食事を抜いて本を買って読んでいました。
本屋さんに行くとあっという間に数時間が過ぎます。表紙や目次を見て、気になるものを拾い読みします。その中で気に入ったものを厳選して、買って帰ります。それでも4冊~5冊になることが多いです。本当は10冊くらい買いたい本が見つかることが多いので、壮絶な勝ち抜き戦を勝利した5冊程度が我が家に迎え入れられます。
買ってきた本を読まないということはありません。何と言っても厳選されたオールスターなので。それでもたまに「なんだこれ。思っていたのと違うな。」っていう本もありますけど、それでもそれはそれで全部読みます。最後まで読んでも、「なんだこれ。」のままである本がほとんどですけど。
私はたくさんの本を読みます。読むんですけど、読むのがとにかく遅いんです。一文字一文字を噛み締めたいというか。行間までしっかり読みたいので。幼少期に欲しい本を買ってもらえなかったというのもあるかもしれません。同じ本を何度も何度も繰り返し読んでいました。
作者が込めた思いをすべて感じたくて、速読とかななめ読みなんてもったいなくてとてもできません。
漫画の単行本ですら、1冊読むのに最低1時間かかります。親戚から「漫画はそんなに真面目に読むものじゃないよ。」と笑われたことがあるくらいです。
文字だけの本もいろんなことに想いを巡らせながら読むので、1冊を何日にも分けて何十時間もかけて読みます。これは幼い時からなので、病気のせいではなく性格や価値観の問題なのだと思います。
なのに本が読めなくなった
兆候
そんな私が、うつ病で本が読めなくなりました。気づいていませんでしたが、突然ではなく徐々に。重度のうつ病と診断される一年くらい前から、仕事に関する本しか読まなくなっていました。そして、読む本の数もいつの間にか減っていました。そのころは、気になる本が減っているなと漠然と思いながら1~2冊程度を買っていました。勝ち抜き戦もほぼ行われていなかったように思います。
違和感
そして、診断される半年前くらいから違和感を感じるようになります。
私、スマートフォンでソーシャルゲームをしていたんです。知っている方も多いと思いますが、Fate Grand Orderというゲームです。イベントパートはフルボイスに近いんですけど、メインストーリーは基本、文字で進行するゲームです。物語も重厚で、本に近い感覚で楽しめるので大好きなゲームでした。ゲームリリースから1年くらいの頃に妻に勧められて始めたゲームで、その時点で6年くらい遊んでいました。
それなのに、この頃からストーリーが進められなくなったんです。文字を読んでいても、内容が分からなくなってしまって。ゲームは好きなので、フルボイスのイベントパートはするのですが、なぜかメインストーリーを進めることができない。
おかしいなとは思いましたが、それでもまさか文字が読めなくなっているなんて思っていませんでした。ゲームに飽きたのかなとか、ストーリーが複雑になって気に入っていないのかな程度にしか思っていませんでした。
確信
そして診断される2カ月くらい前に、ついにおかしいと思うようになります。その時も本を読んでいました。いつもなら数日かかる厚さの本を、わずか2時間で読み終わってしまったんです。いつもと同じように読んでいるのに。決して内容が薄い本ではありませんでした。ただ、1冊まるまる上滑りしているような感覚でした。「あれ?もう終わった。」そんな感覚でした。そして、内容がなにも思い出せない。
さすがにおかしいと思い始めました。この時すでに、精神的な異変には自覚があったのですが、その精神的な異常と文字が読めないということに因果関係があるとは思いませんでした。
ただ、疲れているのだろう。やっぱり、もう仕事を辞めることにしよう。そう決意する気持ちが強くなっただけでした。
結構支障が出ました
文字が読めないのは、診断後も続きました。本が読めないことは悲しくはありますが、まだ我慢すればいいので大丈夫でした。
困ったのは、会社の手続きの書類や保険関係の書類などを読むことができないのです。理解しようとすると頭がイガイガして難しいですし、読むだけでもかなりのエネルギーを費やします。診断から2年程度は、本当に体調がいい時しか読めませんでした。
本当に調子がいい時に書類を取り出して、読んで記入をするのです。記入と言っても、文章ではなく住所と名前と所属や役職程度です。それでもその日のエネルギーは使い切ってしまうので、その日はベッドに転がる以外はなにもできません。翌日くらいまではぐったりしました。
書類を書いている時は変な汗が出ますし、手のひらも汗でびっちょりしてペンが滑るほどでした。でも担当者からは催促の電話が来るので、無理をして頑張っていました。
ここで注目したいのは、文字を発音することや見ることはできるということです。恐らく、脳梗塞などとは違って、文字を読むということ自体に問題が起きているわけではないのだと思います。
文字を読んで、情報に置き換えるという作業ができなくなるのでしょう。人は文字を読んで、映像に置き換えて理解する部分があると思います。その作業ができなくなるのではないでしょうか。最近の生成AIはテキストから画像や映像を作ることができるようになりましたが、作業的にはきっと高度な技術なのだと思います。
これは結構困りました。休職や退職の手続き。傷病手当金の申請や、失業保険などの保険関係のやり取り。会社や役所の手続きなど、書く書類は事あるごとに必要でした。どうしても自筆が必須なことも多くありました。妻に書類を音読してもらうこともありましたが、テレビと一緒で内容が入ってきませんでした。
これは、以前記事にした『脳の通信制限』がかかり、脳の情報処理能力が著しく低下していた状態だったのだと思います。文字を認識するインプットはできても、それを理解というアウトプットに繋げられないのです。
今では御覧の通り
最近1年くらいは本も読みますし、こうして文字で自分の意見をまとめることもできるようになってきました。そして念願のFate Grand Orderも半年前くらいに復帰しました。
良くなっていくのは、書類を書くために必要な日数が減っていくのですぐ分かりました。
一番ひどい時は、1枚書くのに5日前くらいから体調を気にして整えて、10分かけて書いたらそれから3日間はぐったりするという状態だったんです。
それがぐったりする日数が少しずつ減って、調子がいい日を待つ日数も短くなっていく感じでした。
今、こうして文字を操れるということはすごくありがたいことだなと思います。今うつ病に苦しんでいる方の中には、文字を読むことも大変な方も多いと思います。そんな時は、無理をせず。読めそうだと思った時に読めばいいと思います。
文字を発信している私が言うのもなんですが、文字を読んで情報を処理するのって、本当に疲れますよね。できない期間があってもいいんだと思います。そのうち読めるようになります。
どうしても読む必要がある書類は、私が妻に読んでもらったように、誰かに『内容を代わりに要約してもらう』というような自分に優しくする選択肢を常に持っていてください。
読めないことは仕方がないことです。あなたのせいではありません。病気のせいなのだから、無理をする必要はないのです。
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この記事は、医師や医療専門家による医学的な診断、治療、またはアドバイスを代替するものではございません。
医学的根拠はございません。専門的な治療が必要な場合、必ず内科・脳神経外科、または心療内科・精神科の専門医の意見を仰いでください。
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